22 Mar 2015

「例えば、、リボン。」


「忙しいんだよ。」

と、くるりと背中を向ける君。
どうせ構ってもらえなくたって結構!
ちっちゃな時から一人遊びはお得意さまだし、
それは大人になった今もそう。

少し拗ね気味に始まった週末は、
三晩も続いた悪夢のせい。
おまけに今でも左の首はひどく寝違えている。

窓を開ければ今年一番のうぐいすの鳴き声が響き渡り、
「陽気過ぎるじゃないの!本物なの?」
なんて、ひねくれ状態。

ありもしない夢の中の君の態度に、
午前中までは大分打ちのめされていたけれど。。
きっと午後からは大丈夫。
いつもより濃いめに入れたコーヒーで
「私だって忙しいの!」
って、忌まわしい悪夢たちにサヨウナラするの。
大事なのは今ここにある現実なんだから!
と強く自分に言い聞かせて。

とりあえず、デスクの脇のスケッチブックを開く。

「こんな一人っきりの“空き時間”を理想の世界で満たす、
一冊のスケッチブックがあればいいんだもの!」

くどくどとした理屈を自分なりに並べてみたものの、
まだ少々ご機嫌斜め。

だけど、一旦「例えば、、」が始まれば問題ないはず。
何かに打ち拉がれていたら、何かを生み出すことで救われる事もある。


スケッチブックの中は沢山の「例えば、、」が詰まっている。
あらゆるアイデア、ひらめき、情報、間違い、矛盾が混在するところ。

それらをペン一本で好きなだけ収納できて、いつでも持ち運び可能。
性能面ではAppleに負けるかもしれないし、
カギさえかけていないけれど、
ダイヤモンドのついたゴールドのネックレスよりもずっと貴重品。
全てのクリエーションの始まり。

さて、時間をちょっと巻き戻して。。

月曜日。
向かったのは蔵前の問屋街。
細々とした材料を必要とする製作者たちの中には、
きっと私のように、週末を早く終わらせて
問屋さんの営業が始まる週明けを楽しみにしている人がいるはず。

今週取り組んだ作業はリボン選び。
そして、リボンと言えばMOKUBA, maid in Japan!

初めて来たのはもう20年くらい前だったかな。
中学生の頃、母親に連れて行ってもらったっけ。
その頃はビーズやらリボンやらが大好きで、机の引き出し一杯になるくらい集めていた。
とにかく一番良いものが欲しかった。
ベルベット、シルク、ゴブランにアンティークレース・・
美しいものを見ると目だけが肥えていく。
何時間も迷いすぎて決められない私に、
「全部買えば良いじゃない!」と太っ腹な母親。
今思えば、本当に生意気な中学生!


お店のウィンドーも美しいMOKUBA。
ここでのリボン選びはまさに夢の時間。
15時には切り上げるって決めてたのに、もう!

だって、ここでもやっぱり、
終わりの無い「例えば。。」が始まってしまうから。

配色、手触り、幅、光沢感。。

リボンの魅惑にはまってしまったらもう大変!
ただの細長い布切れなのに、なんだってこんなにも心を射止めるの?

何でもないボックスにちょこんとリボンがつくだけで、突然特別なギフトに変わる。
リボンがもたらす喜びの魔法は、
子供から大人までがいとも簡単にかかってしまうみたい。
きっとこの世で最も素朴でピュアな仕掛けね。
まさに魔法の布切れ!

だからリボンの需要が続くことは、なんだか嬉しい。

日本が生み出す魔法の多くは、どこか素朴で控えめで
だけど暮らしの中の人の心情の部分に添うものな気がする。
きちんと頭と心のバランスのとれたデザイン。
この国の本来のテンポを感じられる商品が好き。
モノの本当のクオリティーは、
無理強いしなくても、ちゃんと伝わり拡がっていくと信じている。


さて、袋に詰めたサンプルたちを持って家路に着こう。


テーブルに広げたリボンの束たちを目の前に、
一人「例えば、、」の連続。

「例えば、、これとこれを組み合わせてみたり。。?」
「例えば、、この幅のこの長さで切って結んでみたり。。?」
「うぅーん。。例えば、、やっぱり違うか。。」

まるで気のぴったり合う友達とのおしゃべり。
その会話が何時間にも及ぶ理由の1つには、
こんな「例えば」で始まる未来形の言葉のやりとりが飛び交うから。

「例えば、、」はアイデアを膨らませる言葉。
「例え話」が多ければ多い程、
クリエーションのイメージは拡がっていくもの。

フワフワとして形のないものに分かりやすい筋道を立てながら、
目の前の霧に隠れた道を少しづつ発見し歩いていく。

「例えば、、」

とまた続き。

ラッピングの第3幕は、こんな1人呟きで溢れている!






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