16 Aug 2015

マリッジリング



 360℃からぶつかり合うセミの激しい鳴き声と、
頭のてっぺんから降り注ぐ真夏の太陽が
熱帯雨林にでも迷い込んだ気持ちにさせる8月の午後。

吹き出す汗がまぶたにも・・
まつげを下って落ちるから、数メートル先の人の姿も
時ににじんで見えたりもする。

レモンを思いっきりかじった時みたいな
あのシャキッとした身が引き締まる感覚が欲しくて、
一旦通り過ぎた自動販売機で炭酸ジュースを買う。

年々暑くなる日本の夏。
“風情”を感じるどころか、汗を拭うことに精一杯で。
だけど、道添いの植物はこの上なくキラキラしている。
素足で履いたサンダルの可愛さとは裏腹に出来たマメの痛さも、
夏の輝かしさが拭き払ってくれるみたい。


(この季節に結ばれた二人は、きっとこんな力強い夏のような
固い絆で結ばれるんだろうな。。)

そんな思いに浸りながら手がけた初めてのマリッジリング。

本当の意味で“想い”を込めるということが、
どんなに楽しく、重く、そして価値のある行為かということを
身体で感じた気がする。

数ヶ月前に友人から頂いたリングのオーダー。

どこにも見たことのないマリッジリングを作りたくて、
「コレはきっと難しいぞ!」と内心思っていたのに、

“あれ?”

アイデアはいとも簡単に、そしてストレートに手の内に落ちてきて、
すとんとランディング。
デザインで悩む暇もなく進む幸せの作業。

「こんなんでイイのかしら。。?」

なんて、思わず躊躇してしまうほど。

インスピレーションとは不思議なもので、
探していると目隠しされるのに突然向こうからやってくる。

そして今回のインスピレーションは彼女がくれたもの。
言葉でない何か、“印象”。
ライトキャッチャーみたいに小さな光の破片が飛び散って
その人の詳細を反射で投影する。
これこそ、ポエティークが捉えて形にしたいもの!

自然と昔好きだったキャロンの“Fleur de Roccaile”という香水が頭に過って、
芯のある女性の姿が交差する。
“岩間に咲く花”という意味のその響きの中に彼女の姿が重なったのかも。

ふわふわと空中を浮いているような乾いた空気じゃなくて、
日本の夏のような、
湿度を含んで地面に近いところに存在する空気。
そんな空気を持った一人の大人の女性をイメージしながら、
手にしたワックスを彫っていく。


欲しいのは、“石”のような質感、そして、
その無機質な表面の奥にある人の温もりのような温度。
固いメタルも人の体温が伝導しすると、同じくらいの熱を帯びるもの。
特にリングのように最も近くに在るものは、
知らない間に自分の体の一部になっていく感覚。

さて、今回はペアリング。
男性用のリングを作るのは初めてで、
「女性っぽくなってしまわないかしら。。」と苦戦するかと思いきや、
自分のデザインへの嗜好がどうやら女性的なものに限らないことに気がつく。
それが今回の新しい発見でもあって、なんだか嬉しくなる。


オーガニックな形、自然が生み出す造形美。
そこにモダンな感覚を吹き込んで、
性別を越えて身につけられるリングを、ここにマリッジという形で。
ふたりの絆を祝福して“石の華”と名付けようかな。

ポエティークが目指すマリッジリングは、
凛とし生命力を感じさせるデザイン。

平らでない凹凸のある表面が小川を流れて丸くなっていくように、
形が変わって行くことに抵抗を覚えず、
二人陽気に転がり続けていけるようにという思いを込めて。

ポエティーク初のマリッジリングが完成しました!

お二人に、ポエティークに、おめでとう!




*マリッジリングのオーダーを承っております。メールにてお気軽にお問い合わせ下さい。 info@poetique-bijoux.com