4 May 2014

"The Beautiful"




休日の午前8時。

近所の子供達のキャッキャッという遊び声に起こされて
まだ浅い眠りに浸かっている体の半分をベッドに残したまま、
ゆっくりと起き上がる。

あぁ、これが“休日”のしるし。

カーテンを開けて窓も開けると、
健やかな風にさっきの子供達の遊び声がより身近に
ずっと現実を帯びて響き渡る。



庭先の小枝が今日も風に揺れながら
なんだかとっても楽しそうに
「おはよう!」
といち早く朝のごあいさつ。

5月の朝はこんな感じで気持ちがいい。

春が去って、夏に入る前のワクワク感。
ちょうど運動会のリレーでバトンを渡される瞬間の、
あの緊張感と胸の高鳴りに似ているような。。

植物たちも高い太陽の光を浴びて
待ちきれない様子で高く高く、
空の方へ頑張って背伸びをしている。



「やっと私の出番!」

とでも言いたげなツツジの花が
誇らしげにいつもの坂道を覆い尽くす。

あぁ、
その色が眩しくて美しくて、痛いくらい。

昨日はあんなに強風でご機嫌斜めだった癖に。
今朝になったらもうこんなに上機嫌で、
まったく!

でも彼女の美しさには勝てない。
”は何よりも私の心を溶かしてしまうから。。





届いたのは今、三菱一号館美術館で開催中の
The Beautiful”展への招待状。
今日の私の気分にちょうどぴったりなのは
さて偶然か必然か?



19世紀後半に始まった英国の唯美主義。
物質的な豊かさだけでなく、
生活の中の“”の重要性を唱えた芸術家たち。

そこにはなんのコンセプトも理由も要らない。
唯、美しいこと。
”がそこに存在するということ。
それだけ。

色彩が生む“
フォルムが生むバランスの“
女性、子供、花が与える“

人の“”の基準はきっと千差万別で
一言で定義するのは難しいけれど、
国や文化、時代を超越した“”はきっと存在する。

視覚的、聴覚的に心を溶かしてしまうもの。
人を動かす喜びの原動力!
その繊細で柔らかな女性的な感情は
いつでも優しさを帯びているから決して誰も傷つけないはず。


だから“”は強い。

武器を持たない力。
言葉のない説得。
持続への挑戦。

先人達がこの日本にもたらした“”の中には
他の国にはない優しさが溢れていて
本物の“”を見極めようとする姿勢は“”に対する敬意すら感じる。
それは、彼ら真剣に向き合ってきたもの。

そう、“”と向き合うにはそれなりの勇気と決意が必要なんだ。

複雑な社会の中で人は
物事の背後に隠されたメッセージを探し、
スピードを持って答えを出そうとするけれど、
本物の“”は慌てなくたって消えたりはしない。

だから一旦立ち止まって、
ちゃんと目に映るもののみを信じたら
物事はもっとシンプルなのかもしれない。

だってもしかするとそこには、
ひとかけらの謎も存在しないかもしれないのだから。

本物の“”。
私たちがそれを追い求めることは
きっと何よりも高貴で素晴らしい。

いつでも本物の“”を見分ける才能を磨かないと!



さぁ、今日はまだ午後3時過ぎ。
こんないい天気にはいつもより外に近い席をとって
シードルで乾杯!

「Cheers for our Beautiful Future!」