12 Apr 2016

The First Book




馴染みのある田舎道をドライブ中、
遅れ馳せながら”春”の訪れを感じてる。

その通りをいつもより数倍も魅力的にしているのは、
何を隠そうそこに咲いたサクラたち。
淡いピンクの花びらが定番ユニフォーム、
それを今年もちゃんと羽織ってその役目を果たしている。

早々に満開を通り越した子たち、
柔らかい風に身を任せてひとひらずつその身を散らせながらも
空に舞い上がってはまた輝く。

きっと自分たちの大舞台での魅せ方を知ってるから、
4月のこの時期にはこんな風に必ず咲き乱れるのね。

コンクリートの冷たいグレーと青になりきれない淡い水色。
それからグリーン、目が覚めるほどフレッシュで鮮やかな!
それらの色彩と完璧にコラボしたサクラの姿が、
なんてモダンで美しいの!
春は色で溢れている。


あぁ、今年は随分と短い冬を過ごした感じ。
冬ごもりの楽しい日々はあっという間、
温かい土の中の窮屈さに、居心地の良さを感じ始めたところだったのに、
あっという間に終わっちゃった!

何をして過ごしてたかしら。。
あまり思い出せないや、ひたすらに絵を描いていた以外に。

数週間前までの私。
ほぼノーメイクに雑に一つで束ねただけの髪。
酷い近眼用メガネはオシャレとは程遠く、よりオタク色を強めている。
剥がれたままのオレンジのネイルも然り。
どこかで引っ掛けて穴の開いたタイツに毛玉だらけのセーター。
そんなのすら、全く気にならなかったのは、
一点集中の証だったということにしておこうかな。

今回届いたミッションは「ぬり絵本」の制作。
大好きなルイス・キャロルの”不思議の国のアリス”を
ストーリー形式でぬり絵にしていくというもの。
イラストレーターにとって、なんとも心躍るプロジェクト!

そう、そのハードな詳細を聞くまでは。。


求められたのは新しい筆のタッチ。
あくまで「ぬり絵」な訳だから、線はシングルの単調さが不可欠で。
ある意味、これは目に見えない誰かとのコラボレーション、
相手にとっての塗りやすさが第一条件になる。
それは、描く上で今までになかった全く違うアプローチ。

それから人物、そして表情。
これまで”気配”や”雰囲気”を描き出す為にあえて避けてきたものが、
ここにきてまさかのお題になるとは!

そして最後に、スケジュール!!
「描けるかしら。。」なんて呑気にボヤいている余裕なし。
とにかく今すぐ描き始めないと!といった具合の短さと来た。
限られた時間の中でのペース配分は自分の能力を知る一番の鍵となる。

だから今回密かに付けたその名はズバリ、
”ミッション・インポッシブル”。

挑戦するのか、しないのか?
もちろん答えはYES!
1%でも成功の可能性があるのなら、
出来るか出来ないかの判断を下す前にとにかくやってみる。
身の引き締まるチャレンジというのはこういうもの。
こんな怖さが、案外好きだったり。


「インスピレーション、湧かなかったらどうするの??」

いつもなら抱きがちなその不安が今回はほぼゼロに近い。
「だってそんな不安がってる時間ないんだもん!」
が本音のところ。。
こんな状況下で要るものは、
流れ星みたいに予測不可能なものを必ず捕まえてみせる!
というより、自ら降ろさせてみせる!
そんな覚悟と姿勢だけ。
そしてそれは不思議と必然的に生まれてくる。



近道?
それももちろん考えた。
一番要領よく省エネで仕上げるコツは?
そして出た答えはと言えば、
こんな激流の中では精一杯確実な足場を組むことだけが、
自分にとっての唯一の近道だということ。


あら、だけどなんだか楽しいかも?
ちょうどサーカスでいう綱渡りみたいに、
失敗への不安と成功への期待の真ん中辺りが、常に私のベストポジションみたい。
向こう岸まで無事に辿り着けたのなら、
万歳、拍手喝采!
なんて清々しい気分!
そんなゴールをひたすらイメトレしながらの作業は始終苦しくもあるけれど、
同時になんとも言い難い楽しさもある。

そうして、3月の終わり。
春の風が流れ込むと共に私の”ミッション・インポッシブル”、
無事に任務完了!

消しゴムのカスだらけのデスク、
ぐちゃぐちゃに並んだの色鉛筆。
積み重なった何枚もの原画の束。
あぁ、描き終えた。。
ホッとするのと同時になんだか侘しさを感じる、、
って、ちょっと変ね。。


新しいイラストのミッションは、
いつでも儚い夢のよう。
その短いトリップの中で出来る限りの思い(これは愛?)と能力を傾ければ、
様々な面白い発見がある。

適当な挑戦の中では見えないもの、
真剣勝負でしか見えてこないものを垣間見た気分。
それは、大変さと厳しさの中で発揮される火事場の大チカラみたいなものが、
自分の中にもちゃんと在ることを知れるチャンスでもあったみたい。



さぁて、次は私も色をつけよう!
色鉛筆に蛍光ペン、水彩にパステル etc.
なんだっていい。
自分のインスピレーションを信じて自由に気ままに、
白黒の世界に息を吹き込むように。
ぬり終わった後に出来上がるのは、
世界でたった1つだけの自分の絵本になるのだから。



『ぬり絵ブック・不思議の国のアリス』
只今、全国の書店、ネットショップにて絶賛発売中です!
http://www.amazon.co.jp/

世界が色づき始めたこの時期にはぴったりのこの贈り物を
ぜひ一緒にお楽しみください!





16 Jan 2016

A Happy New Year 2016 !



遅ればせながら、、
皆様、新年明けましておめでとうございます!

今年も一年間、日々訪れる出来事の中ではたと思い感じたことを
私なりの言葉と共にこのブログの中で綴っていきたいと思います。

こちら側にとってはダイアリーのような、
顔の見えないそちら側にとっては
不意に見つけた他人の走り書きメモのようなもの。

「一人のクリエイター」という前に「独りの人間」として
形のない”思い”をここに映し出そうとするこのささやかな試みに
どうぞ気ままにお付き合いくださいませ。

*

そんな訳で、今年も掲げる新年の抱負!
今日はちょうど1月15日、まだまだ遅くないはず?!

新年はいつも慌ただしく始まるから、
気がつけば新しい手帳を手に入れることも
恒例のNew Year's resolutionのアナウンスも
毎年このくらいになっている。


そう言えば、この前引いたおみくじもまだ開けてない。
なんてことだッ!
後でゆっくり開けようってお財布の中にポイっと入れたまま、
すっかり忘れちゃった。。
でも今、それが本日のちょっとしたお楽しみに変わったから、
ちょっとラッキーっとでも思っておこう。

さてさて、小さく畳まれた紙の中。
何の言葉が私を待っている?

フムフム、なるほどなるほど。

(無理に入れれば袋裂ける・・・一升枡には一升しか入らぬ・・・
無理に入れればこぼれる、抑えつければ枡さける・・)

トホホで思い当たる節あり、分かりやす過ぎて逆に痛感。

あぁ、今年はきっとこんな感じ。
肩肘張らずにちょっとリラックスして休憩タイム。
ここ数年間は常に前のめりの戦闘態勢だったことだし、
心の騒がしさを相手にしての日々のやりくりには
どうもしかめっ面で過ごす日も多かったから、
ここでひとまず一旦停止ボタンを押しておこう。
それから自分自身に言い聞かせる。

「今ある目の前のものは、時間をかけて築き上げたもの。
だから、もう少し大事に丁寧に育てていきなさい」と。


やらなければいけないことの前に、
本当にやりたいこと。

自分が容易くできてしまうことの前にも、
真にやってみたいこと。

器用であればあるほど、
次から次へと手を出してしまう。
正直、それがいつもズレそうになる理由。
だから今年は何度でもその0地点に戻る意識を持つこと、
それが大事かな。。

あらゆる可能性に背を向けないこともまた然り。

朝の天気予報が外れて雪が降ることもあるように、
期待が外れることも、
約束が破られることも、
やりたいことや目指す方向が途中で変更することあって、
挫折が成功に、或いはその反対へと、
思いもよらない目的地へ辿りつくことなんていつだってあり得ること。

”可能性”の3文字は、蹴られ続けてできる規則性のない多面体の石っころ。
コロコロと転がっては、
いつどの面を表にして止まるのかは誰にも分からない。

すなわち可能性においては、
良いこと、悪いこと、どちらも同時に出番待ちということ。
要は、
どっちが出ようとも同じように温かい気持ちで
”Welcome!"と迎え入れたいということ。

*

自己の平和を築くのは自分次第。
そして世界の平和を築くのも個人個人の平和次第。

それには無論時間がかかるけれど、信じて行動すれはいつか必ず実は育つもの。
桃・栗3年、柿8年・・なんて諺もあるし、
美味しい人生のフルーツは愛情と手をかけてこそ
出来上がるもの。

一人ひとりの平和が世界の平和に繋がっていくことを信じながら、
その願いの矛先を今年外の世界にも!

真っ白いカサブランカから始まった2016年。
この清く麗しい花の香に包まれたなら、
きっと素晴らしい年にならないはずがない!


わたくし、鈴木 阿以のブログ
into the looking glass〜
をどうぞ今年も宜しくお願いします!

♡♡♡



30 Dec 2015

小さなスパーク



面倒くさいのに追わずにはいられない。
掴めやしないのにトライせずにはいられない。
時間の無駄なのは分かっているのに費やしてしまう。

そんな感情と頭との間に生まれる葛藤は、
時々”Passion”と呼ばれることがある。

頭上のシャンデリアみたいに
キラキラと柔らく輝いて部屋を優しく照らすもの。

お金なのか、愛なのか?
と聞かれると、
迷わず”どっちも!”と答える。
それは全て内なるそのスパークの為だから
決して欲張りでもわがままでもないでしょ?

(君はいっつも、そして昔っからそうなんだから!)

あら、その声は?!

新しい家具の配置に、
ソファの生地選び。
手を出したことのないスパイスから、
廃盤になった本の収集まで。
言い並べたらキリがない。

「見てみなよ、こんな小さな部屋なのに
あらゆる物が転がっている。もう十分でしょ!」

心が引き寄せられるあらゆる方向へ、
次から次へと手を出すくせに、
辿り着いた海辺で大きな貝殻を見つけたのなら、
もう朝まで帰ってこりゃしない。
これはもう性分というもの。

人の性格はそんなに簡単に変わるものじゃない。

砂で埋もれた海水の中に、
一瞬でもキラッと光るゴールドの粒を見つけたのなら、
どこまでも掘りおこして見つけ出すまで
絶対に諦めない。
というか、諦められない。

あなたが思うより私は気まぐれじゃないのよ!

と言いたいところだけど、
それもどうやら十中八九当たってる。

だけどそこには、ちゃんとした理由があるんだから。


心の中で爆ぜた一瞬のスパークに
我が人生においてAクラスの価値を置いている。

目に見えないそのスパークは、
空気に触れた瞬間にダメになってしまうかもしれないし、
煙と化して消えてしまうかもしれないから、
ぼんやりと見逃してしまうなんて、勿体ない。

きっと、まぼろしに決まってる・・

(本当にそれでいいの??)

と、またもや天の声が囁いてくる。

そのスパークに何か意味や重要性があるかなんて、
後から考えればいいんだから、
とにかく手を伸ばしてキャッチするんだよ。

そう、あなたの言う通り。
一生なんて本当に短いもの。
もしも奇跡を起こしたいのなら、もっと集中、もっと我武者羅に!

耳を澄ませば、
心の中の火がパチパチ音を立てながら密かにそう叫んでる。

「あら、我武者羅にですって?」

「そんなの無理!野蛮極まりなくってよ!」

おっしゃる通りでございます、淑女の皆様。
それは、とても激しいものなのです。

今すぐ、シルクのグローブを脱ぎ捨てて
素手で勝負しなければ掴めないものなのです。

綺麗に整えておめかししたネイルもこの時だけはご免遊ばせ。
節だらけの指にゴールドのリング。
剥がれかけている絆創膏がなんともシュール。


寒さでシワシワになった両手をみつめながら、
「ハァ。。」
なんて深いため息をつかないで。
それは何かを生み出す手。
働き者の魅力的な手。
その傷だらけの手にはあなたの純真さとひたむきさが映るから、
ただただ美しいと思う。
小さなスパークはきっとそんな手の内にやってくるもの。
少なくとそう信じていたい。

*

今年もあっという間に終わりが近づいて、
この一年を振り返ってみたり、
来る年に思いを馳せてみたり。
少しセンチメンタルな気分に浸るのが毎年の恒例行事。

いつもブログを読んでくれている数少ない皆様、
今年一年、ただつらつらと書いたり書かなかったり、、
取り留めようのない私のつぶやきを
一緒にシェアして頂きありがとうございました笑。

2016年に向けていざ乾杯!
シャンパンでも飲みながら、
ぜひ心に弾けた気泡のような小さなスパークも、
どこからともなく訪れるひらめきも、
決して見逃すことのなくキャッチしていけますように。。


来年もどうぞよろしくお願いします!


Ai Suzuki


15 Dec 2015

So Original.



  もうずうっと長い間、
ほんの指先だけで辿っていた地図の中の細長い小道が
今、現実に目の前に現れ始めている。

気がつけば、目に映る光景も通りすがりの人々の顔ぶれも
どことなく変わっていてまるで新しい土地にでも引っ越したような気分。
そこに、行き先を尋ねてくる見知らぬ通行人。

「奥様、どちらへ?」

(えっとですね、、とりあえず奥様じゃないですし)

「あなたはどちら様ですか?」

と半分イラッとしながら聞き返してみる。

すると、しばらくの沈黙。
ピクリとも動かない無表情が「誰でも結構」と言ってる。
この人、無視出来なさそう。。
参ちゃったな、、
さてさて、なんて返事しようかしら?

”これからの未来”

・・てのはつまらないし、当たり前。
それに答え方としてセンスがない。

”理想の未来”

うーん、あまりに多くありすぎて選べない。
お金に子供に家族に時間。
素敵な家具にヴァレンチノのドレス。
眺めのいいアトリエに、それから、それから。。
あぁ、逆に惨め。


もごもごと口ごもっている目の前の相手に呆れた様子で
その通行人は次の質問を投げかけてくる。
あ、舌打ち!?
ひょっとして少しイラついてる?

「奥様、それではどんな道がお好きで??」

(だから、奥様じゃないってば!)

ふぅ、もういいや。

好きな道”

なんかイマイチ。

幸せな道”

ではあるけれど。。

うぅ〜ん、もっとしっくりくる表現があったはず。

そうだ、
私が求めているのはこの形容詞かもしれない。

オリジナル!”

これが一番ぴったりでしょ。
そう、私は”オリジナル”な道が好き。

それは舗装されていない素敵な凸凹道。
おまけに雑草だらけでお世辞にもキレイだとは言えないけれど、
この道が好きだと今胸を張って断言できる。


自分の前のみに続いている先の見えない獣道。
おぼつかない足取りに、絡まりつくツタのうねりがとても魅力的。
ジャングルの中にまだ発見されていない種の鳥が生存するように、
沢山の可能性を秘めている魅惑的な景観には、
自由な”想像”の喜びを残してくれているみたい。

「さぁ、これからどんな風に仕立て上げよう?」

そのワクワク感がたまらない。
ファッションデザイナーが一枚の布から服を作る気分って
こんなかしら。。
一流のジュエラーが一粒のダイアモンドから
世界にひとつのリングをデザインする時間のように。

ちょっと待って、、

さっきから道のあちらこちらでチラチラと目に入ってくる何かがある。
よく見ると、足元には紫色の小さな花が咲いていている。

「あらスミレさん、そんなところに居らしたのね!
なんて控えめなの!」

するとミス・パープルは答える。

「あら、これが私の在り方よ。」


あぁ!あなたにも!
オリジナルな咲き方、
それは彼女だけのオリジナルな魅せ方。
オリジナルな着こなしは、オリジナルな歩き方と同じように
その人の内側を反映する。
オリジナルな話し方にオリジナルな表現方法。
それらはきっと、そこにその人なりのオリジナルな考え方、
オリジナルな生き方が存在しているからで。

だけど、"オリジナル"でいることは意外と難しい。
オリジナルでいようとすればする程、空回り。
やっとゲットしたと思ったら、
無意識に誰かのコピーだと判明してがっかりしたり、
オリジナリティーを追うだけの日々を送れば
結局、哀れな囚われ人。
それもそのはず。
それは生まれるもので作り上げるものではないんだから。


手先がどれほど器用でも、
メレダイヤを敷き詰めた王冠を仕上げるには時間が要る。
視力がどれほど良くても、
物事の見方がずれてしまえばすべてが曇りガラス。
弁がどれほど立っても
人の心を掴むには経験と知恵が要る。

最初は誰かの真似から、
或いは、
憧れから始まるかもしれないオリジナリティーへの旅の道中では、
自分の肌に合わないあらゆる不純物は取り除かれて、
省かれて、淘汰されて、
最後に残る一握りの金の砂を見つけることのよう。

本当の“オリジナル”とは指紋ほどにユニークで、
唯一無事のアイデンティティー。 

そんな訳で、、

最近は「かわいい」と言われるよりも
「Your are so original!」
と言われたい。

-

あ、さっきの通行人!
まだこの辺りを行ったり来たり。

色んな人に質問を投げかけては困惑顔。
どの答えにもなんだか納得いってない様子ね。

あの人もきっと探しているところ。
自分だけのオリジナリティーを!

今すぐ走って言って伝えてあげるべきかしら?

あなたのその歩き方はとても魅力的だと!




31 Oct 2015

Love me, Love me!




あぁ、かわいい彼女に新しい恋の予感。
ヴァレンタインはまだまだ先だっていうのに。

あれ?

あの子ってこんなだったかしら?
いつも冷静沈着で、何が起こってもポーカーフェイス。
誰よりも大人びてて落ち着き払ってるくせに。

見てよ、あの子の顔!

赤いほっぺたに、真っ赤なリップ。
ハート型のピアスに、ネックレス。
目にうっすら涙なんか浮かべちゃってる。

それにさっき、見かけちゃったの。
バスの中で肘つきながら空一点を見つめてるところを。
一体、何があったの?
どこへ行くっていうの??

あら?

こんな曲、彼女にしては珍しいじゃない?!
アメリカンなレトロポップスなんて。
シンプルでありきたりで分かりやすい歌詞。

こんな彼女は見たことがない。
まるで夢見がちだった幼い頃にタイムスリップしてる。

全くもって驚きだわ!
キューピッドの矢がどこかしらか飛んできて、
彼女のハートを突き刺した。
なんてスウィートな痛み!


あの子はただ、街の交差点を歩いていただけ。
もしかしてそれは失敗で的が外れただけのただの流れ矢?
狙ったわけでもなんでもなかったりもする。
だけど見てよ、あんな風になっちゃうなんて。。
ほら、今もあの子の心の声がそこら中に鳴り響いてる!

「Love me , Love me!」 って。

体中の”トキメキ”が止まらないってのがバレちゃってる。

「本気になったりしたらダメよ!」
って忠告したいけれど、
「きっとまた痛い目にあうんだから!」
って警告もしたいけれど、

ハァ、もう既に時遅し、、

She is looking for a trouble みたいね。

*

そう言えば、

”トキメキが欲しい” と、ちょうどこの前誰かが言ってた。
どこに行けば”それ”を見つけられるか?だって。

”トキメキ”って、目に見えないけれど
誰もがとてもキラキラしたものだって知ってるはずで。

それはきっと恋に落ちた時の、
あの抑えられない幸せな衝動に一番近いからかしら?

モノとの出会い、人との出会い、
あるいは場所との、出来事との
思いも寄らない巡り合わせの中で発症する心地よい熱を帯びた感情。
言い換えれば、
まるで幻の宝物を偶然探し当てたような
奇跡のような贈り物。

そんなに特別じゃぁ、滅多に起こるはずないじゃない!


だけど例えば・・

90歳を過ぎたおばあちゃんが、
綺麗に塗られたラベンダー色のネイルを見た時の目に映る輝き。
まるで粉雪が夜空に待って吹き上がる光のスパークル、
言葉に変えられない感動の稲妻が彼女の心の中に花を咲かせるように、
それはどこで生まれるのか分からない。

それに、それってただ天から「はい、どうぞ。」って
降ってくるわけじゃない。

「これまで」があるからこそ見えてくる景色。
周りまわって辿り着いた今のランディング地点にふさわしい出会いが、
ふさわしいタイミングで遭遇した時にだけ
感じ取れる意味を成すその出会いの価値。

天の声:(またまたそんなつまらないこと言いだして!
その分析癖、本当に悪い癖だわ!)

それに恋も同じ。
昔にあんなにも夢中になった誰かに、
今の自分がまた同じように夢中になるとは信じ難い。
とてもロマンチックではあるけれど。。

天の声:(まぁ、なんて冷めてるのかしら!)

だって経験を積めば同時に知識もついていく。
無意識にもキャッチする情報も変わっていくし、
感覚だってそれなりに育っていく。
つまり、成長するってことね。

天の声:(それと”トキメキ”がどう関係あるの?!
あなたって、本当におヒマ。
他に考えることないの?)

それにしても・・
”トキメキ”が欲しいの願うのは、過去にそれを得たことがあるからでしょう。
だから、最後に”それ”と遭遇した時の自分とその状況を
冷静に観察してみるのもその居場所を知る一つの手がかりになるかも。

と言ってみたところで、、やっぱり心変わり。

天の声さん、あなたの言う通り、
もう堅苦しいことなんて考えないわ!!


”トキメキ”の正体や、どこからやってくるか、
いつ遭遇するのかなんて知りたくない。
予測する必要なんて全くなくってよ!

未知なるもの、ひとつでも多くあって欲しいから。

ただ、迎える準備だけはしておくの。
いつでもマインドはオープンに。

人の心はまるでライトキャッチャー。
だけど何をキャッチして光を集めるはその人次第。
だから晴れた日だけにきらめくって訳じゃないみたい。
ただ”心はクリスタルに”が必要条件。
不純物だらけじゃ虹色の美しい光は放てない。

*

そうして、あの子の小さな恋は、
ある日コンコンと扉をノックしてやってきた。
そして理由もなく心をかき乱した!
長い間眠っていた子供の頃の純真さを今目覚まさせちゃった。

あら、そんなに怪しまなくたっていいのよ。
だって、さっきも言ったじゃない。
それは、本当に稀に降ってくる奇跡の贈り物。
後先考えずに素直に受け取ればいいのよ。

それにしても、
あの子ったら本当に幸せそう!
あんなにファショナブルにもなっちゃって。
そして、とっても綺麗になった。。

あぁ、今願うは彼女の恋が成就することだけ!


・・・なんて、まっ赤な嘘。
あの唇と同じくらい。

私も恋していいかしら・・?

天の声:(わたしもちょうど、そう思ってたところ!)


24 Oct 2015

嵐と女。


 

 嵐は去った。

今となっては、よくあること。

八方塞がりだった状態は時間と共に緩みを増していって、
やっと通り抜けられるくらいの隙間を作り出したみたい。
柔らかく繊細なシルクの糸で編まれた布が
時を経て粗野なリネンに変化でもしていくように
ざっくりとした、でも肌馴染みの良い
柔らかな力強さに変わっていく。

嵐が去って、
女は生き残った。

もしかすると、それはまだまだ続いているのかしら。。
だってそこから立ち去ったのはこちらの方だから。

頼りない外壁でできたシェルターの中に居ては、
緊張や緊迫、不安や疑心暗鬼ばかり。
それらがもたらすものに
窮屈さ以外の何も感じないでいたけれど、
こうしてこっそりと扉を開けた目の前の空は
意外とカラッと晴れていたりもする。

それまでの記憶の一つ一つが
窓ガラスに張り付いた雫となって、
ただゆっくりゆっくり滴り落ちていく様を
肩越しに横目でチラリと見つめるだけ。

そこに少しの懐かしさと愛情を感じながら。

嵐がやって来れば、
女は強くなる。


「倒せるものなら倒してみなさい!」

少しニヤリとして見せたりして、
かなり挑発的。
その低い声の中にはもう落ち着きと余裕の色さえ帯びている。

これらの嵐は、全て乗り越えなければならない壁の数々。
不意に押し寄せるストレス。
無情にもかけられる負荷。

それらはそして全てサバイバルゲームへの
麗しいインヴィテーション。

やっと軽やかになった足取りをまたもや重くされるような、
まるで「よーい、ドン!」で始まる生き残りゲームを
遠隔操作か何かで誰かに仕掛けられているような気がするけれど、
強い女は逃げやしない。

「もう始まったらしょうがないじゃない!」
と開き直ったり、
「強い意志を掲げて戦うしかないんだから!」
と腹をくくって挑む覚悟だってできる。

そして分かったことは、
”女”ってほんとに強い生き物だということ!
他人が、それから自分自信が思っている以上に・・

それともただ単にこうかしら・・

立ち留まるのか進むのか。
二者択一の選択に差し掛かった瞬間、
頭ではとっさに後者を選んでいるという事実には、
人間生き残りのための脳内自動装置が備わっているというだけのこと。

「とにかくそこから遠くへ!」
迷いの無いストレートな口調のナビゲーションが鳴り響く。
すると、
その場でオロオロとした様子で立ち往生していた”こころ”の方は、
突然手綱で引きずられ、渋々移動。。

「とりあえずの被害は免れたでしょ!」っていうわけで。
これって、なんだか無理やりな応急処置。


嵐がやってきては去っていき、その繰り返し。
そして女はと言うと、、、


「こんなの、よくあることだわ!」
と、肩をすくめてみせる。
どんなに理不尽なリクエストにも
こんなに聞き分けがよろしくなっちゃって。。

あーぁ、少し歳を取ってしまったせいかしら。。。?

個人レベルでのサバイバル処方はきっと様々で、
スポーツに旅、歌に彫刻、それから料理、スカイダイビング、
新しい語学に自己啓発本にクスリに。。etc.
全てを掻き集める人の後ろでは、
全てを手放すことを選択する人もいる。
どれがベターともベストとも言えないもの。

そして自分の場合、
やっぱり新しい世界をクリエイトすることで
救われる何かがある。
時に荒れ狂う嵐のど真ん中に置かれても、思考は常に前方へ。
いつまでも前進していくことをモットーに、
胸を張って歩んでいく為に掲げる信念。

だけど時には、
「こんなに疲れ果てた心と体で、一体なにが出来るというの??」
というのが本音のところで。。

だから一旦休息をとって、全てはそれからに。
ほら、素晴らしいセルフマネージメントだってちゃんと備わっている。

さぁ、深く長い睡眠からやっと目覚めたら、
コップ一杯の冷たい水を飲み干そう。
そうすれば、デトックス茶でも飲んだみたいに、
このずっしりと重たい頭がきっとスッキリするはず。
それに、
体の所々に残る筋肉痛のような痛みは長い戦いで勝ち取った”勲章”というもの。
アザも切り傷も多少の打撲も、
きっとすべて美しいと自慢できるはず。

嵐の後に、
女はまた新しくなる。


もう一度ゼロからのスタート。
吹き飛ばされ消えていったアイデアやイメージはもう必要ないんだから。
白紙撤回された文書をもう一度始めから書き直すように、
新しい視点と好奇心とスタイルで。

コツコツと今やるべきことを積み上げていこう。
四角い砂糖の塊からだってピラミッドを目指すように、
その先に大きな何かが出来上がるというもの。

いつでも前進あるのみ。

「嵐よ、いつでもやってきなさい!」


16 Aug 2015

マリッジリング



 360℃からぶつかり合うセミの激しい鳴き声と、
頭のてっぺんから降り注ぐ真夏の太陽が
熱帯雨林にでも迷い込んだ気持ちにさせる8月の午後。

吹き出す汗がまぶたにも・・
まつげを下って落ちるから、数メートル先の人の姿も
時ににじんで見えたりもする。

レモンを思いっきりかじった時みたいな
あのシャキッとした身が引き締まる感覚が欲しくて、
一旦通り過ぎた自動販売機で炭酸ジュースを買う。

年々暑くなる日本の夏。
“風情”を感じるどころか、汗を拭うことに精一杯で。
だけど、道添いの植物はこの上なくキラキラしている。
素足で履いたサンダルの可愛さとは裏腹に出来たマメの痛さも、
夏の輝かしさが拭き払ってくれるみたい。


(この季節に結ばれた二人は、きっとこんな力強い夏のような
固い絆で結ばれるんだろうな。。)

そんな思いに浸りながら手がけた初めてのマリッジリング。

本当の意味で“想い”を込めるということが、
どんなに楽しく、重く、そして価値のある行為かということを
身体で感じた気がする。

数ヶ月前に友人から頂いたリングのオーダー。

どこにも見たことのないマリッジリングを作りたくて、
「コレはきっと難しいぞ!」と内心思っていたのに、

“あれ?”

アイデアはいとも簡単に、そしてストレートに手の内に落ちてきて、
すとんとランディング。
デザインで悩む暇もなく進む幸せの作業。

「こんなんでイイのかしら。。?」

なんて、思わず躊躇してしまうほど。

インスピレーションとは不思議なもので、
探していると目隠しされるのに突然向こうからやってくる。

そして今回のインスピレーションは彼女がくれたもの。
言葉でない何か、“印象”。
ライトキャッチャーみたいに小さな光の破片が飛び散って
その人の詳細を反射で投影する。
これこそ、ポエティークが捉えて形にしたいもの!

自然と昔好きだったキャロンの“Fleur de Roccaile”という香水が頭に過って、
芯のある女性の姿が交差する。
“岩間に咲く花”という意味のその響きの中に彼女の姿が重なったのかも。

ふわふわと空中を浮いているような乾いた空気じゃなくて、
日本の夏のような、
湿度を含んで地面に近いところに存在する空気。
そんな空気を持った一人の大人の女性をイメージしながら、
手にしたワックスを彫っていく。


欲しいのは、“石”のような質感、そして、
その無機質な表面の奥にある人の温もりのような温度。
固いメタルも人の体温が伝導しすると、同じくらいの熱を帯びるもの。
特にリングのように最も近くに在るものは、
知らない間に自分の体の一部になっていく感覚。

さて、今回はペアリング。
男性用のリングを作るのは初めてで、
「女性っぽくなってしまわないかしら。。」と苦戦するかと思いきや、
自分のデザインへの嗜好がどうやら女性的なものに限らないことに気がつく。
それが今回の新しい発見でもあって、なんだか嬉しくなる。


オーガニックな形、自然が生み出す造形美。
そこにモダンな感覚を吹き込んで、
性別を越えて身につけられるリングを、ここにマリッジという形で。
ふたりの絆を祝福して“石の華”と名付けようかな。

ポエティークが目指すマリッジリングは、
凛とし生命力を感じさせるデザイン。

平らでない凹凸のある表面が小川を流れて丸くなっていくように、
形が変わって行くことに抵抗を覚えず、
二人陽気に転がり続けていけるようにという思いを込めて。

ポエティーク初のマリッジリングが完成しました!

お二人に、ポエティークに、おめでとう!




*マリッジリングのオーダーを承っております。メールにてお気軽にお問い合わせ下さい。 info@poetique-bijoux.com