24 Oct 2015

嵐と女。


 

 嵐は去った。

今となっては、よくあること。

八方塞がりだった状態は時間と共に緩みを増していって、
やっと通り抜けられるくらいの隙間を作り出したみたい。
柔らかく繊細なシルクの糸で編まれた布が
時を経て粗野なリネンに変化でもしていくように
ざっくりとした、でも肌馴染みの良い
柔らかな力強さに変わっていく。

嵐が去って、
女は生き残った。

もしかすると、それはまだまだ続いているのかしら。。
だってそこから立ち去ったのはこちらの方だから。

頼りない外壁でできたシェルターの中に居ては、
緊張や緊迫、不安や疑心暗鬼ばかり。
それらがもたらすものに
窮屈さ以外の何も感じないでいたけれど、
こうしてこっそりと扉を開けた目の前の空は
意外とカラッと晴れていたりもする。

それまでの記憶の一つ一つが
窓ガラスに張り付いた雫となって、
ただゆっくりゆっくり滴り落ちていく様を
肩越しに横目でチラリと見つめるだけ。

そこに少しの懐かしさと愛情を感じながら。

嵐がやって来れば、
女は強くなる。


「倒せるものなら倒してみなさい!」

少しニヤリとして見せたりして、
かなり挑発的。
その低い声の中にはもう落ち着きと余裕の色さえ帯びている。

これらの嵐は、全て乗り越えなければならない壁の数々。
不意に押し寄せるストレス。
無情にもかけられる負荷。

それらはそして全てサバイバルゲームへの
麗しいインヴィテーション。

やっと軽やかになった足取りをまたもや重くされるような、
まるで「よーい、ドン!」で始まる生き残りゲームを
遠隔操作か何かで誰かに仕掛けられているような気がするけれど、
強い女は逃げやしない。

「もう始まったらしょうがないじゃない!」
と開き直ったり、
「強い意志を掲げて戦うしかないんだから!」
と腹をくくって挑む覚悟だってできる。

そして分かったことは、
”女”ってほんとに強い生き物だということ!
他人が、それから自分自信が思っている以上に・・

それともただ単にこうかしら・・

立ち留まるのか進むのか。
二者択一の選択に差し掛かった瞬間、
頭ではとっさに後者を選んでいるという事実には、
人間生き残りのための脳内自動装置が備わっているというだけのこと。

「とにかくそこから遠くへ!」
迷いの無いストレートな口調のナビゲーションが鳴り響く。
すると、
その場でオロオロとした様子で立ち往生していた”こころ”の方は、
突然手綱で引きずられ、渋々移動。。

「とりあえずの被害は免れたでしょ!」っていうわけで。
これって、なんだか無理やりな応急処置。


嵐がやってきては去っていき、その繰り返し。
そして女はと言うと、、、


「こんなの、よくあることだわ!」
と、肩をすくめてみせる。
どんなに理不尽なリクエストにも
こんなに聞き分けがよろしくなっちゃって。。

あーぁ、少し歳を取ってしまったせいかしら。。。?

個人レベルでのサバイバル処方はきっと様々で、
スポーツに旅、歌に彫刻、それから料理、スカイダイビング、
新しい語学に自己啓発本にクスリに。。etc.
全てを掻き集める人の後ろでは、
全てを手放すことを選択する人もいる。
どれがベターともベストとも言えないもの。

そして自分の場合、
やっぱり新しい世界をクリエイトすることで
救われる何かがある。
時に荒れ狂う嵐のど真ん中に置かれても、思考は常に前方へ。
いつまでも前進していくことをモットーに、
胸を張って歩んでいく為に掲げる信念。

だけど時には、
「こんなに疲れ果てた心と体で、一体なにが出来るというの??」
というのが本音のところで。。

だから一旦休息をとって、全てはそれからに。
ほら、素晴らしいセルフマネージメントだってちゃんと備わっている。

さぁ、深く長い睡眠からやっと目覚めたら、
コップ一杯の冷たい水を飲み干そう。
そうすれば、デトックス茶でも飲んだみたいに、
このずっしりと重たい頭がきっとスッキリするはず。
それに、
体の所々に残る筋肉痛のような痛みは長い戦いで勝ち取った”勲章”というもの。
アザも切り傷も多少の打撲も、
きっとすべて美しいと自慢できるはず。

嵐の後に、
女はまた新しくなる。


もう一度ゼロからのスタート。
吹き飛ばされ消えていったアイデアやイメージはもう必要ないんだから。
白紙撤回された文書をもう一度始めから書き直すように、
新しい視点と好奇心とスタイルで。

コツコツと今やるべきことを積み上げていこう。
四角い砂糖の塊からだってピラミッドを目指すように、
その先に大きな何かが出来上がるというもの。

いつでも前進あるのみ。

「嵐よ、いつでもやってきなさい!」


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