15 Dec 2015

So Original.



  もうずうっと長い間、
ほんの指先だけで辿っていた地図の中の細長い小道が
今、現実に目の前に現れ始めている。

気がつけば、目に映る光景も通りすがりの人々の顔ぶれも
どことなく変わっていてまるで新しい土地にでも引っ越したような気分。
そこに、行き先を尋ねてくる見知らぬ通行人。

「奥様、どちらへ?」

(えっとですね、、とりあえず奥様じゃないですし)

「あなたはどちら様ですか?」

と半分イラッとしながら聞き返してみる。

すると、しばらくの沈黙。
ピクリとも動かない無表情が「誰でも結構」と言ってる。
この人、無視出来なさそう。。
参ちゃったな、、
さてさて、なんて返事しようかしら?

”これからの未来”

・・てのはつまらないし、当たり前。
それに答え方としてセンスがない。

”理想の未来”

うーん、あまりに多くありすぎて選べない。
お金に子供に家族に時間。
素敵な家具にヴァレンチノのドレス。
眺めのいいアトリエに、それから、それから。。
あぁ、逆に惨め。


もごもごと口ごもっている目の前の相手に呆れた様子で
その通行人は次の質問を投げかけてくる。
あ、舌打ち!?
ひょっとして少しイラついてる?

「奥様、それではどんな道がお好きで??」

(だから、奥様じゃないってば!)

ふぅ、もういいや。

好きな道”

なんかイマイチ。

幸せな道”

ではあるけれど。。

うぅ〜ん、もっとしっくりくる表現があったはず。

そうだ、
私が求めているのはこの形容詞かもしれない。

オリジナル!”

これが一番ぴったりでしょ。
そう、私は”オリジナル”な道が好き。

それは舗装されていない素敵な凸凹道。
おまけに雑草だらけでお世辞にもキレイだとは言えないけれど、
この道が好きだと今胸を張って断言できる。


自分の前のみに続いている先の見えない獣道。
おぼつかない足取りに、絡まりつくツタのうねりがとても魅力的。
ジャングルの中にまだ発見されていない種の鳥が生存するように、
沢山の可能性を秘めている魅惑的な景観には、
自由な”想像”の喜びを残してくれているみたい。

「さぁ、これからどんな風に仕立て上げよう?」

そのワクワク感がたまらない。
ファッションデザイナーが一枚の布から服を作る気分って
こんなかしら。。
一流のジュエラーが一粒のダイアモンドから
世界にひとつのリングをデザインする時間のように。

ちょっと待って、、

さっきから道のあちらこちらでチラチラと目に入ってくる何かがある。
よく見ると、足元には紫色の小さな花が咲いていている。

「あらスミレさん、そんなところに居らしたのね!
なんて控えめなの!」

するとミス・パープルは答える。

「あら、これが私の在り方よ。」


あぁ!あなたにも!
オリジナルな咲き方、
それは彼女だけのオリジナルな魅せ方。
オリジナルな着こなしは、オリジナルな歩き方と同じように
その人の内側を反映する。
オリジナルな話し方にオリジナルな表現方法。
それらはきっと、そこにその人なりのオリジナルな考え方、
オリジナルな生き方が存在しているからで。

だけど、"オリジナル"でいることは意外と難しい。
オリジナルでいようとすればする程、空回り。
やっとゲットしたと思ったら、
無意識に誰かのコピーだと判明してがっかりしたり、
オリジナリティーを追うだけの日々を送れば
結局、哀れな囚われ人。
それもそのはず。
それは生まれるもので作り上げるものではないんだから。


手先がどれほど器用でも、
メレダイヤを敷き詰めた王冠を仕上げるには時間が要る。
視力がどれほど良くても、
物事の見方がずれてしまえばすべてが曇りガラス。
弁がどれほど立っても
人の心を掴むには経験と知恵が要る。

最初は誰かの真似から、
或いは、
憧れから始まるかもしれないオリジナリティーへの旅の道中では、
自分の肌に合わないあらゆる不純物は取り除かれて、
省かれて、淘汰されて、
最後に残る一握りの金の砂を見つけることのよう。

本当の“オリジナル”とは指紋ほどにユニークで、
唯一無事のアイデンティティー。 

そんな訳で、、

最近は「かわいい」と言われるよりも
「Your are so original!」
と言われたい。

-

あ、さっきの通行人!
まだこの辺りを行ったり来たり。

色んな人に質問を投げかけては困惑顔。
どの答えにもなんだか納得いってない様子ね。

あの人もきっと探しているところ。
自分だけのオリジナリティーを!

今すぐ走って言って伝えてあげるべきかしら?

あなたのその歩き方はとても魅力的だと!




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