23 Sep 2014

“枠”と“型紙”


あぁ、今年の夏も終わりね。。」

病み上がりのフラフラとした足取りと
まだ夢うつつ状態で座るデスクの前でぼーっとそんなことを思ってみる。
熱で潰れた週末の秋晴れはこの上ない後悔を残すけれど
どこか満足気。

ちょっと無理をした行動の結果は
こんな風にちゃんと自分に帰ってくるんだな。
まるでピンポン球!

*

天気予報によると風向きが変わったらしい。

そうして届いた次のミッション。
新しいプロジェクトを始める時は
空っぽのポストを覗き込むと届いている
真っ白な封筒を手にするかのように胸がわくわくする。


封筒を開けると、
あるひとつのお題がひと言だけ記してあって
これから拡がるストーリーになんともいえない興奮を覚える。
まるで謎解きに挑むシャーロックホームズ、
ひらめきと推理が交差する心弾む瞬間。


そして今回もその封筒は開かれた。
記されていたその言葉は、、

“型紙”

シンプルで未知、
自分の思惑を今度も軽く外させられた!
くるりと向きを変えて吹き流れる季節風のような、
そんなお題。

“型紙”
え、でもちょっと待って。
私の描くひねくれた線を“型紙”にする?!
どうやって?

自分の線は呼吸そのもの。
だから一瞬で自分の呼吸を止められるようなもの。
ショックと共に一気に体温が上昇する。

だって型紙と言えば・・・

洋裁のパターニング、
紙の着せ替え人形かなんかのミシンの線。
なぞってハサミで切り取って、、
そんな作業。
だから、もっぱら分かりやすくて
伝わりやすい線が必要条件
だから枝のように絡まり合うこの線を1本にしないと!


 


 


焦りと戸惑いにほのかに熱い額がさらに熱くなる。
そろそろ危険信号?

慣れないマジックペンを手に取って
何度も何度も描き直す。
なのにいくら描き直してもまっすぐにならない。
太いところと細いところが微妙に残ってしまう。

面白いことに、自分の描く線は
この生まれつきのくせ毛のうねりとそっくりだ!

さあ、どうしよう。。
この“枠”をどうやって乗り越えようか?

自分の中の葛藤は誰にも救えない。
突然突きつけられた決闘書は若干の笑みを浮かべながら
無慈悲にも目の前に立ちはだかっている。

“ルール”とも言えるこの静かなる“枠”
妥協ととるか、チャンスととるか?

(そりゃ、チャンスでしょ!)

どこからか聞こえてくるその声の主は
まさしく自分自身で。

切れる寸前にスイッチが入るヒトの楽観的思考の不思議は
またもやこういう場面で発起されるらしい。
だって、
今さら気取ったペサミストの振りをしてる時間なんてないじゃない。
締め切りの向こう側で
旗を振って待っている人たちがいてくれるのに。

そうやって自分の中のオプティミズムを
今こそヨイショと引っ張りだして
その“枠”と戯れてみることにする。

そして、その延長線に見えてきたのはこんな答え。

(ふーん、線がダメなら色で遊んでみようか。。
あとは質感と立体感と。。
あれ? これってジュエリーデザインっぽい。
なんだ、デザインイラストだと思えばいいんじゃない!)

すると急に心が軽くなって、
同時に自分でこしらえてしまっていた“枠”に気づく。


知らず知らずのうちに、“絵を描く”ことと“デザイン”することを
ぷっつり分けてしまっていたみたい。
こんなにも密接な関係にあるはずなのに。
同じ棚の違う引き出し。
探しやすいのに、探せずにいた。
きれいに整理整頓することは
たまにこんな罠を自分に仕掛けてしまう。。
なんて皮肉なこと!

デスクの上はいつもくちゃくちゃなのに、
無駄にキッチリと整理されすぎていた頭の中は、
どうやら見えない“枠”だらけ!

忙しくて時間がなければないほど、
行き交う情報が多ければ多いほど、
見えない“枠”
忘れてしまわないように?
見落としがないように?
それとも、
物事がごちゃごちゃになる前に
ある程度の強制力を持ってコントロールしておきたいから?

そんな風に“仕分ける”だけの“枠”なら、
制御する為だけの"枠”なら、
たまにはとっぱらってしまった方がいい。
物事を簡素にくくることはそんなにも賢くない。

この社会で設置される色々な“枠”も然り。
性別、年齢、国籍、職業等。。
これまた頑丈でびくともしない“枠”の数々!
それらは簡単には撤去できるものじゃないけれど、
抜け道はいつでもどこかにあるはずで。。

例えば・・
それらの“枠”の中でどう遊ぶか。
どのツールに変換して
どんな線の絵を描くのかに少し似ている。
“枠”が与えられて、
自分の中の創造性がより活発になっていくイメージ。
頭と心を駆使しながら
本当の“自分らしさ”を見分けるチャンスかもしれない。

必要なのはきっと、
思考回路の変換とアイデアとちょっとの忍耐!
どんな状況下でも自由に泳いでいけるように。


*


今回届いた“型紙”というミッション。
それは、自分にとって予定外に吹き出した季節風みたいで
ポンと背中を突かれて、
ボーダーラインの向こう側へ一歩押し出された気分。

絡まった毛糸の玉を注意深く解いていく作業の途中では
いらつきを感じたりもするけれど、
いつしか楽しい作業に変わっていたりもする。

そう、困難だけど夢中になってしまうことには、
いつでも新しい発見がついてくる!

こんなわくわくする風が好き。

次の新しい白い封筒はいつ届くかな。。